元ソ連大統領のゴルバチョフ氏が出演しているルイ・ヴィトン社のCMをご存知でしょうか?
「旅」とテーマに、ルイ・ヴィトン社が仏女優の大御所、カトリーヌ・ドヌーブさん、テニス界のスター夫婦、アンドレ・アガシさん、シュテフィ・グラフさんをCMモデルに採用した話題の広告ですから、多くの人が見たことがあるでしょう。

【ルイ・ヴィトン社提供】舞台はベルリンの壁。ゴルバチョフ氏がこの場所を選んだ。
CMのモチーフは「ベルリンの壁。ある会議からの帰路」。女性写真家アニー・リボヴィッツさんが、被写体のうちに秘めた思いや感情をとらえ、ゴルバチョフ氏の人生の一瞬をポートレートとして、写真に収めたのです。
アニーは、ジョンレノンとオノヨーコの2ショットを撮影した写真家で、来年2月に、ドキュメンタリー映画が公開されることになっています。
世界のスターが勢ぞろいしたこの広告は今夏に公開されました。アニーは、ゴルバチョフと相談しながら、具体的な背景の場所やカットを決めて行ったそうです。
しかし、この写真の中に、実は大きな謎が含まれていたのです。そして、その謎の部分は、答えがみつかり、「ゴルバチョフ氏からのメッセージではないか」との憶測が広がっているのです。
ゴルバチョフ氏の左脇のヴィトンバックの上にある部分を見てください。

【ルイ・ヴィトン社提供】
この写真をさかさまにすると、あるロシア語が浮かび上がってきました。
それは、「リトビネンコ暗殺事件。容疑者は7000ドルで売り飛ばされようとしていた」という見出し。
この雑誌は、CM用の演出でつくられたものかと思われましたが、実は現存するロシアの雑誌であることが判明したのです。
雑誌は、プーチン政権を批判する記事が登場するロシアのリベラル系の「新時代」。表紙やその見出しから、リトビネンコ暗殺事件の特ダネが記された特集記事が組まれている号と判明したのです。
ルイ・ヴィトン社によると、「この雑誌はゴルバチョフ氏本人が、選び、撮影所にもちこまれた」とのこと。こうした世界のスターが登場する企業広告は、細部にいたるまですべてが計算され、オープンとなります。場所選びはもちろん、明るさ、小物の位置、そして被写体の表情など、場合によっては何千枚撮影したうちの1枚を厳選して選ぶのです。
つまり、この雑誌が広告の中に写っており、ゴルバチョフ氏が「新時代」を選んだというのは、ゴルビーの意思が反映されていたといっても、間違いではないと思います。
では、特集記事には何がしるされていたのか?
前置きが長くなりますが、リトビネンコ氏暗殺事件とは何かということをちょっとだけ説明しましょう。
リトビネンコ氏は元ソ連情報諜報員。KGBの内幕を披露し、プーチン政権に楯突いて、ロンドンで亡命生活を送っていましたが、昨年秋、放射性物質をもられて、暗殺されました。
ロンドン検察庁は、KGB職員のルゴボイ氏を容疑者と断定。ロシア政府に身柄の引渡しを求めましたが、ロシア政府はこれを拒否し、ついに、英露両国で、外交官の追放する措置にまで発展したのです。
特集記事には、ロシア大統領府の外交筋からもたらされた有力情報をもとに構成され、ルゴボイ氏が犯行に加わった経緯と理由とともに、「殺人の背景にはクレムリンのある治安組織の一部が加わっている。その目的はロシアと西側諸国との関係の先鋭化だ」と記されていました。
一方で、ゴルバチョフ氏は、このCMが公開されたのとほぼ同時期に、モスクワ市内で行われた記者会見で、リトビネンコ氏暗殺事件に言及していました。
「この事件は政治問題化されようとしており、誰かがそうした状態を必要としている。英露関係を損なわせたがっているのだ」とし、背景にある事件の動機について、雑誌の記事と同様の指摘をしていたのです。
ゴルバチョフ氏は、90年代にピザハットのCMに出たことはありますが、もともと企業CMには出演はしません。今回のCMは、アニー・リボヴィッツがカメラマンだったことと、ギャラをすべて、自らが率いる環境保護団体に寄付することが受け入れられ、出演をOKしたのです。
ゴルバチョフ氏は悪化をたどる英露両国の外交が正常化すべきだとも発言していました。
全世界に公開されたルイ・ヴィトン社の広告。これは、やはり、ゴルビーからのメッセージだったのでしょうか?
憶測はさらなる憶測を呼び、特に英国やロシアでは、大きな話題となりそうです。
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